SOCO/AO/SUNオーナー 関山善博オーナーインタビューPART1「緻密な分析と実践、そして洞察力に秘密あり」
『三浦の部屋』編集長が話題の美容師を訪ね歩く、徹子の部屋みたいな企画です。
原宿でばったり会って「編集長、こんど自分のお店出すんですよ!」と言われてから、ほんの3年。あっという間に3店舗をオープンさせたのが関山善博さん。増店舗にスピードがあるなら、美容学校生からのアプローチ数もスピード高め。あっという間に人気サロンになりました。まるでビジネスマンと話しているようなニュータイプ・オーナー。興味あります! まずはお店のことから聞いてみましょー!!
編集長(以下/み):3つもあるから、さっそくなんだけど。最初のSOCOをオープンするまでの経緯をおしえてください。
関山(以下/関):それまでいくつかサロンに努めてきた中で、集客方法が雑誌からネットに移ってきて、ああ時代が変わってきたんだなという気はしていたんです。そんなときに、ある美容室のオーナーに会って、「全部プロデュースしていいから」と言われまして。「じゃあやってみようかな」と、その店に異動しました。入ってからHPを変え、コンテンツを変えていって、クリエイティブに強い要素を見せつつ、集客サイトでマーケティングをやり始めました。その店には松尾(haruさん。現AO代表)もいました。当時は彼も惰性でやっているような美容師だったんですが、がんばるようになり、さらに途中で新しいスタッフも増えて、その子がWカラーとかやり始めて、1年弱くらいで売り上げが3倍くらいになったんです。
そのときはポジション的にはオーナーがいて、僕がディレクターみたいな立ち位置だったんですが、だんだん運営的に意見が合わなくなってしまって、ぶつかることが多くなってきたんです。スタッフは5人にまで増えていたんですが、僕とオーナーの軋轢が原因で、結局解散みたいな感じになってしまいました。それで、僕はそのあと新宿の面貸しの美容室に行きました。独立前準備というか、これからどうしようか。まだそのときは自分のお店をやるとは確定してなかったんですよ。
み:そのころは知らなかったな……。
関:僕はネットのアイデアが割と出てくる方で、そのころはカラー剤の新しい事業、オンラインでカラーチョイスができて発送するというEコマースの事業を考えていて、それをやりたいなと思っていたんです。けっこう本気で動いていて、工場に行ったり、司法書士のところに行ったり。でも結果2000万円くらいかかるという試算が出て……まあサロンを出すのと同じくらいかかると。Eコマースは当たればでかいけど、外れるのもでかい。美容室の方がお金の動きもわかりやすいし、安定性も見込める。そこでじっくり考え直して、方向変換をしました。で、松尾と陽奥(現SUNディレクター)を新宿に呼んで話したんです。
み:それで自分でお店を出そう、と。
関:面貸しの美容室ではモチベーションがあまり高くない人しか働いてなかったので、なかなかそういうところでモチベーションをキープするのは大変で。早くお店を出したいなあと思っていて、それから半年後に実現しました。最初は僕、松尾、陽奥、もう一人のスタッフの4人です。初めは中野に出そうと思っていましたが、物件の都合で結局代官山にしました。
み:資金はどうしたんですか?
関:全部借りました。あるメーカーに相談をしに行って、お金の借り方とかを習って、自己資金と合わせてスタートしました。
み:どんなお店にしたいと思っていましたか?
関:いろんなお店で働いてきたおかげで、それぞれの長所・短所が把握できて、じゃあ自分はどういう店にするんだ、ということが考えられたんですよ。それでブランドサロン的なブランディングをちゃんと作った上で、マーケティングもしっかり乗せればけっこう差別化が図れるんじゃないかなと思ったんです。この両立ってやってるところがないというか、難しいんですよ。どっちかが強いというのはあるけど。「僕ならそこを両立できるんじゃないかな」と思ってやってみました。
み:心境的には大勝負だった?
関:もう大勝負でした。1店舗めのSOCOを出した時は、初月は赤字でした。それまでの顧客があったとはいえ。2か月めでもちょい赤字、3か月めでやっとトントン。僕は給料を取ってないにもかかわらず、その結果です。そのあとで黒字に転換するんですが、まあ大勝負でしたよ。
み:SOCOを出して予想通りだったこと、予想外だったことは?
関:売り上げの上昇スピードが……事業計画は大きめに書いたんですが、意外とその通りになったんですよ。なんか予想していた以上に。あと人材に関しても、説明会とかやると大体たくさん集まるんですよ。全国から、予想外に来てくれました。
み:SOCOの売り上げがそこまでついてきた要因ってなんだと思いますか?
関:マーケティングをしっかりやったってことですかね。コツコツ。時間はいっぱいあったから。ホットペッパーの管理システムを毎日チェックして集計して、どんな流れで、どのスタイルがpv数が取れていて、反響があるか、とか。分析をしていました。その結果、自分たちがいいなって思っているスタイルじゃないスタイルの方が数字が取れているということがわかったんですよ。それを見つけて、上位表示させたりとか、そういうヒットするスタイルを作ったりとか。あとはブログを毎日しっかり書くとか。そういう一見地味なことを毎日みんなでやりました。その結果、売り上げが上がってきたと。
み:そいうこと、大事なんだねー。
関:あと、大きかったのが、松尾の売り上げが一気に伸びていったことです。おしゃれキングのケンシローとか、ヒロミツとかがきてくれて。ヒロミツを坊主にした時があったんですが、これがめちゃくちゃバズりました。坊主ランキングで3位に入ったりして、お客様がめっちゃきたんですよ。それから人が採用できる流れができました。
み:急角度で売り上げ上昇的な?
関:二次関数的な上がり方ですよね。直線的というより。
み:で、2店舗目のAOを出すわけですが、それまでSOCOオープンからどのくらい?
関:ちょうど2年3か月です。
み:いつぐらいから考え始めたんですか?
関:SOCOだけだった時に、セット面8台だったんです。それが売り上げがぐーっと増えた時に席が空かないっていう現象が出たんですよ。予約が取れない、席がないからシャンプー台で待ってもらうとか。そうするとスタッフの中から、予約を入れられないという意見も出てくるんですよね。あ、これはもう店出さなきゃいけないよなっていうことになり、AOを出すことを決めました。
み:なぜAOは表参道に?
関:あそこしかなかったんですよ(笑)。地下ですが、家賃とか含めて、このくらいだったらいいかなと。物件って、タイミングですよね。毎回苦労しますけど。でもそれを確定して進めないと、予約がたまりすぎてて、その年の12月がきたら絶対無理だという予測は立っていたので。もうAO出す前は定休日も開けていました。スタッフのシフト変えて。そこまでやらないと予約が取れない状態でしたから。
み:スタッフはどうやって集めたんですか?
関:人事に関しては、人づての紹介、知り合いとか……うちがやっていることが、比較的自由で、クリエイションもやっていて、マーケティングにも力を入れていて、というところで、美容師の中で話題になっていたみたいなんです。それで縁があって繋がったりとかで人が増えていきました。人が入ると売り上げは上がり、今度はアシスタントが足りないと。さらにAO出店したのが12月で、売り上げが爆発したので、さらに人手が足りなくなり……あのときは全員でフル出勤をすることになっちゃいました。それでこれは人事に力入れないといけないと思い直し、18年の年明けにリリースしたのがブログの人材募集ページです。あれのおかげで、また応募がくるようになったんですよ。ホットペッパーのリクルートページにも広告を出したらいっぱいきてくれるようになって、今でもすごいきてくれますね。
み:どういう人と働きたい、というのはあるんですか?
関:それはもう明確にしてあるんですが。性格です。人間性。これがずれていなければ。人間性がずれていると、そこは教育とかでは難しいなと思っています。そこさえあれば一緒に働いていけるなと。会ってみて、ふわっとした話ですけど、今まで採用してきた中でまずいなっていう人はいないですね。
み:会うのは一人で会うんですか?
関:中途採用は会いに行くことがありますが……新卒の場合は、僕は出ていないんですよ。陽奥、松尾、菅原、かなの4人に任せています。今は僕がやっている仕事の領域を徐々に減らしていく方向で進めているので。
み:そして、こんどのSUNは? AOの出店から短いスパンだけど?
関:そうですね。AOを一昨年の12月に出店して、10か月後にオープンですから、非常に早かったとは思います。でも、これもまたSOCO、AOのキャパが埋まってきて、去年の12月を迎えるのはまたまずいということが見えてきていたので、すぐに決断しました。去年の春くらいには。いつも物件で苦労することが多いんですが、その中で借りられたところです。
み:3店舗の違いってどういうポイントですか?
関:違いはめっちゃあるわけじゃないんですよ。内装のデザインも僕が自分でやりますし、HPも僕が作ります。ブランドのフレームみたいなものは僕が作ります。でもそれぞれの店のトップがいて、ちょっとだけテイストが違っていたりはします。AOはメンズが強かったりとか、Wカラー、ハイトーンとか。SUNは大人っぽいのが強かったり、SOCOは女性スタイルが強かったりとか。在籍するスタイリストによって、そういうのは定義されてきますね。
み:そもそも、それぞれの名前の由来は何ですか?
関:SOCOは、もともと狙っていた中野の物件が倉庫物件だったんで、SOCOっていう名前はつけようと思っていました。結局そこは流れて代官山になりましたけど、そのままSOCOにして、内装もちょっと倉庫っぽいイメージにしました。AOは、名前が決まってない状態の時に内装が先に入っていて、ふと「床を青くしてみようかな」って思ったんですよ。で、AOです。AとOって、ロンドンのパンク、SexPistolsとかの時代のアナーキーマークってAと Oで構成されていて、無政府主義とか自由主義とか意味があって、その意味合いと掛け合わせているところもあります。と言いつつ、あんまり名前に由来につけるのは、ちょっと苦手で、ダサくなっちゃうような気がしてて(笑)。でSUNは、三番目の店だから(笑)
いろんな店での経験と、それを無駄にしない観察眼と分析力。サロンで重要なのはスタッフ、その人間性であることも見抜いている。やるじゃねーかと思いつつ、PART2へ!
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