THEATER 佐々木達也さんPART2「美容業界を変えるということは、ボクたちのできる価値の提供のアップデートから始まると考えてやっていました」
さて、THEATERの物語は、ここから飛躍的な盛り上がりを見せていきます。さっそく続きをいきましょう!
み:最初はスタッフ含め全員で四人だったんですか?
さ:四人と、あとレセプションの地田っていう女の子と。それが創業で。あとは知り合いやつながりとかでやっと集まった9人でスタートしました。16席あるのに(笑)。
み:最初から9人でやろうと思っていたわけではない?
さ:そうですね。でも目標はあったんです、最初からできるだけ集めたいという。その結果って感じです。でもそれで走り始めたら、思っていたよりどんどん人が集まって。
み:へー。
さ:初月もそれなりに順調でした。
み:なぜ? なんか作戦があったんですか?
さ:ありましたね。「値決めは経営」ってTAKEもよく言っていて、「中価格帯の料金が当たる」っていうのは世の流れを見ていた時にあるなと、話し合った時にも「安くはしたくない、お客さんが求めてるのって中価格帯じゃない?」って。そこが当たるという確信がありました。
み:どうやって集客したんですか?
さ:集客ツールは色々使っていました。その年の年末は、さらにいい結果が出て。そんな時に、創業5か月めで横浜店を出すという、ぶっとんだことやったんです(笑)。「初動でどれだけいけるかが勝負だ」って。そうしたら人は集まってくるんですよね。入りたいって。
み:なんなんですかね? 求人かけても人が来ないって言ってるサロン多いのに。
さ:ですよね。ありがたいですね。
み:給料とかも全部公開にして?
さ:そうですね、してました。美容業界の求人広告って「当社規定による」って書いてあるんですが、「求人広告こそ当社規定を書く場所だろ?」って思ってて。あれが不思議で。そういうのも明確に書きたいし、あとボクは美容師さんって基本的にアツい人間だと思っているんで。アツい気持ちがある人を受け止めますよって書いて、それもわざと長文で書いてるんですよ。「これを読んで心が動く人はほとんどOKだろう」っていうつもりで求人広告出してます。そうしたら、すごい応募がくるんですよね。
み:歩合も明らかにして。
さ:TAKEがめちゃくちゃ計算してくれて、損益分岐出して、なん%まで人件費でいけるかって叩き出した最終数値が歩合43%だったんです。1%間違っていたら危なかったです。
み:なかなか高いよね。
さ:なかなか高いです(笑)。給料の最低保証を24万円にして。フリーのお客さんもちゃんとつけるようにして。美容業界のいろんな人に話を聞くと大体これくらいがスタンダードなんだなっていうのがあるんですが、それに圧倒的な差をつけたくて。業務委託ではなく、正社員雇用でそれができるっていうことをひたすら追求してて、うちが先頭走れば人は来るからと、そこを突き抜けようと出したのが歩合43%でした。
み:40%じゃないんだね?
さ:40%じゃないですね、50%いきたかったんですけど、色々計算したら無理だね、と(笑)。細かく。正直、言葉は悪いかもしれないですが「従業員も大切なお客さん」だと思っているんですよ。お客さん以上にお客さんだと思っています。世の中は価値の提供の追求が大切だと思っているんです。従業員が増えれば、その受け皿となる店舗も増えますし。とにかく雇用のことを考えています。
み:それにしても2店舗めのオープンが早い。
さ:もちろんマーケティングもしっかりやった上で、ですが。お客さん想定の人が美容代に払えるのはいくらだろうとかを考えていって、これが理想だろう、これですよね世の中が求めているのはと。もしくは美容師が求めているのは、と。ボクらは自分たちが「これいいでしょ」「これカッコいいでしょ」って打ち出すよりも、「世の中がこれを求めているからこれに当てに行こう」っていう戦略から入ります。マーケットを見て、それ対してプロダクトがあるという。それはお客様も従業員に対しても。
み:2店舗目以降は?
さ:その翌月、創業して半年後に川越に。
み:早っ!
さ:半年で3店舗はかなり異例かもしれないですね(笑)。THEATERがうまくいって、ちょっとだけ余裕があったし。この3店舗ができて、ダダダンっていきました。今度8店舗めが出ます。
み:その四人の役割は、いつどう決まったんですか?
さ:最初からあったわけじゃないんですよ。例えば単純に撮影はSHIGERUが一番うまかったので、四人が頑張って撮影やるよりSHIGERUがやったほうがいいんじゃない? ってなって、メンズや教育は大井がうまいから大井が、経営考えるならTAKEがうまい、労務とか計算とかデスクワークだったらボクが一番できるので、そうしたほうがよくないかって自然とフィットしていった感じですね。それがバランス良かったんです。たまたま。それでいて、四人がお互いを好きですね。めっちゃ仲いいです。
み:今スタッフはなん人くらいですか?
さ:今は145人くらいです。
み:すご! 急にそんなにまとめられるもの? なんだかんだ言って3年前だよ!
さ:そうですね今2年10ヶ月くらいですね。今いるスタッフたちのおかげです。基本的にいい子ばっかりですし、人間教育もめっちゃやっています。一番時間をかけています。
み:それはどうやって?
さ:新卒の子はアカデミーがあるので。入社して週3日間はアカデミーで勉強をします。技術レッスンと座学を一日8時間、自社のアカデミー会場で。そこでボクと大井と各店の講師が来て、みっちりやります。新卒はそこで鍛えられます。人としての原理原則をずっと説いていて。
み:何か模範になるものはあったんですか?
さ:全くないです。もともと創業時のTAKEの未来構想の中にアカデミーがあって、大井から教育をやりたいって希望があって、それを四人で話し合って、じゃあこうやろうってなって、今年が二期生です。この子たちが半年でデビューします。
み:早いですね。
さ:めちゃ早くしました。美容師もアシスタントって、カップ洗ったり、掃除したり。「これなんの意味があるんだろうな?ファストフードのバイトでもできるな。美容師のアシスタントなんだから美容師の勉強をしなきゃいけないのに、その練習が営業の前後だと、眠いか疲れているかだし」と。それだと生産性が悪いし、ちゃんと計算すると朝夜練習した3年分くらいの時間が、アカデミーの週3日の勉強でとれる。それを凝縮して、しかも入社したてのやる気満々な時に集中して学べば、同期もたくさんいるし、これをやると楽しく仕事をしながら結果を出せる子になるんですよ。今力を入れているのはこれです。THEATERは美容業界を変える、マーケットに当てにいくとかいっていますが、いずれ教育機関になっていくと思います。そこがメイン事業になっていくと思います。今年は40人いますよ。
み:多いな!
さ:去年は25人だったんですが、その子たちは今スタイリストでバリバリやって売り上げをあげています。そのうち数人はボクたちの給料を超えています(笑)。
み:へー!
さ:人間性も向上しながら、めっちゃ稼いでます。これってけっこう夢ありませんか?
み:そういう子たちは何がいいんですか? 特徴はありますか?
さ:優しいです、抽象的ですが。人の気持ちがわかる。相手だったらどうしたいか、ということをちゃんと考えられるようになろうと教育しているので。自分が自分がじゃなくて、お客さんがどう考えているか、気持ちに寄りそえる。スタイル写真をあげるにしても、自分がこう見せたいじゃなくて、お客さんが見たときに自分でもできそうって思ってもらえるような写真をあげるとか。相手の気持ちを汲むことがちゃんとできている子ですね。むちゃくちゃ優しいです。カットもかなり早くなっています。もう顧客経験数が半端じゃないので。
み:今の集客ツールは何を使っていますか?
さ:ホットペッパーとインスタとミニモが多いですね。
み:そのツールで勝負していくのは価格、と。
さ:それこそ価値の提供ですよね。それにミニモで1位になった子が、自分のやり方をお店で公開してみんなでシェアするんです。自分だけのノウハウとして隠すのが普通だと思うんですが、みんなでやろうって。そういう優しい子たちがいるから、結果みんながそうなると。
み:中途採用の人たちはどうなんですか?
さ:今はアカデミーに週一できます。半年〜1年以内にデビューしますね。10月〜は在り方が少し変わり、完全にアカデミー生となります。
み:スタイリストの中途採用は?
さ:雇いますよ。最初に理念を伝えてのち、さらに現場のスタッフがみんな優しいから、それに染まって馴染んでいくんですよ。少しは日々の衝突はあるとは思いますが。こちらも歴史から学び伝播したり、いろいろと勉強しながらその中途入社スタッフに語っていって。ウチは、美容師に人間力をとにかく与えている会社です。みんなのためにと思ってやっていますよ。
み:辞める人いるんですか?
さ:あんまりいないですけど、ちょっとはいます。独立したりで。本人たちの自己実現を叶えることも大事ですから。それ以外は価値の提供として僕らのいたらなさだと思うので、悔しいです。
み:今振り返ってみて、当初自分たちが思い描いた通りに経過していますか?
さ:決して満足はせず、まだまだって思いながらやってますね。この後もありますし、2024年にはこうなって、2025年にはこうなっている、とか。
み:どんなビジョンですか?
さ:アカデミーをもっと全国展開したいです。というのは、例えば札幌店を出したいとか、京都店を出したいとかいっても、地場がないじゃないですか。いきなりこっちから行って地元の人を雇用してはじめても難しいんですよ。うちが大事にしているのは人間力なのに、人間力が噛み合わない人がやってもしょうがないから、まず最初にアカデミーが行こうと。そこで教育をして半年後にオープンってことになれば、地場を知ってるし、マインド一緒だし、理念知っているし、優しい子になるしと。
み:半年間アカデミーだけ? 投資ですね。
さ:ガンガン投資します。お金の使い方はオール投資ですね。ボクたちの給料はそんなに高すぎないようにしています。美容室って、てっぺんがお金吸い上げているイメージがあったんですが、でも実際に経営をやってみるとやっぱりお金ってかかるんですよね。とはいえ従業員は頑張っているし、結果出した子達にはちゃんと還元してあげたい。四人ともそこに関してブーブーいう人いないです。むしろ1年目で自分たちを超える子が出てきたことを喜んでましたね。嬉しかったですよ。そもそもが自分たちのためにTHEATERを作ったのではないので。美容師のために、世の中に貢献したいというのが最初にあるから。
み:ここまでの話、こんなお店は、自分だからできたみたいなことあります?
さ:自分というか、四人です。この四人でよかったというか。相手ベースで物事を考える。昔はボク、そうじゃなかったんですよ。自分、自分で。今は相手だったらなにしてほしいかなとか、他者メインで自分が成長するみたいな、その思考が四人全員そうなんです。これがよかったのかな。100%相手目線でいく。相手が喜んでくれる。それが幸せですね。理念が貢献だから、当たり前なんですけど。仕事の本質が、自分が金稼ぎたいからじゃなくて、他者が喜ぶからというのが創業時から身についているので、それが強いと思います。それが従業員もそうなので、だから上手くいっているのかなと思います。
み:しかし急にこれだけ増えるとどこかで漏れが出てくるとかないんですかね。もしくはこれから?
さ:うちは新卒がすごく多いので、それをアカデミーでしっかりやっていますし、そもそも面接から教育はしています。面接=教育だと思っていますし。うちの考え方や成り立ちをしっかり説いて「それでも入りたいかい?」って確認して。面接に来ているんだけど、こっちがプレゼンしているみたいな場にしていますし。面接のあり方って大事ですよね。
み:面接は誰が?
さ:新卒は四人でやりますが、中途採用の場合はボクがやります。
み:忙しそうですね。
さ:やっぱり「代表仕事してないのダメじゃん」ってなるので。一番仕事をしていく責任がボクらにはあります。
み:最後なんですが、美容師ってどんな仕事ですか? もし人に聞かれたらなんて答えます?
さ:圧倒的に「貢献する仕事」になっちゃうんですけどね。面白いんですよね、こんなにウエットな仕事ないなと思っていて。人間関係で。AIやテックがもう進歩していますし、理解もしていますが、仕事の時に人と話しながら、コミュニケーションをとりながら施術を1対1でずっとできる、こんなのなかなかないなと。だからはてしなくコミュニケーションと貢献の仕事だと思います。あと可能性がめっちゃある仕事だと思います。カットしている人が、カットだけしに来ているわけじゃないので。情報、元気、いろんなものをあげられるじゃないですか。美容師が美容師だけじゃ終わらない可能性があるし。例えばネイル紹介してあげたりとか、会社で経済圏を作っちゃえばいいですし。それが世の貢献になるので。
み:うんうん。
さ:人を相手にする仕事だから、人として成長できるというのはめっちゃあります、それと同時に回りの人も自分と一緒に成長できるような仕事です。難しいですね(笑)。でもめっちゃ好きですよ、美容師。もっと美容師増えればいいのにと思います。
「美容業界のために」という声はたくさん聞きますが、ここまで具体的に、わかりやすく伝えながら実績を出しているサロンがあるんですねー! そのクレバーさに感心するところですが、肝心なのは時代にフィットすることと、何より「美容が好き」であること。これって、やっぱり大事なことなんだなって、あらためて思いました!
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