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OCEAN TOKYO Osaka代表 出井直助さんPART2「デビュー後の地獄の日々を乗り越えて」

み:ところで今いくつになった?

出:30歳です。

み:あらためて美容キャリアをおしえてください。どうして美容師になろうと思ったんですか? それはいつごろですか?

出:中1ですね……僕、けっこう天パーなんですけど、当時はくせ毛とかのワードを知らなくて。その頃KinKi Kidsが流行ってたんですよ。二人ともサラサラヘアで。

み:あったねえ、そんな時期。

出:女子たちがみんな好きだったんですよ、KinKi Kids。こういう髪型いいよね、なんて言ってて。そこに僕が冗談半分で「俺もこういう髪型にしようかな」って入っていったら、「いや、出井天パーだから無理でしょ」って急に冷たい目線で言われて。なんか告白もしてないのに振られたみたいな気分になって、えらく傷ついたんですよ。で、クラスのイケてるグループのやつがワックスとかアイロンとか持ってて、そういうものを使って手間をかければどうにかなるんだということを知るんですが……そんなある日スポーツ万能で顔もカッコいいけど髪型がダサいやつが美容室行ってきたんです。そしたら爆裂モテ始めたんですよ、そいつが。それを見て、これは髪型の印象に違いないと思って、そいつにおしえてもらった店に行ったら僕を劇的に変えてくれて。その店でワックスも買って、次の日に見よう見まねでスタイリングして学校行ったら、「出井天パーじゃん」って言ってた女子が「めっちゃ似合ってんじゃん」っていってくれて。

み:お!(拍手)

出:「カッコいいじゃん」って。他のやつからも評判良くて、プラスの意見しかなかったんですよ。そこで、髪の毛だけでコケにされていたのが逆転できて、自信がついたんですよ。それから髪型とはファッションに興味持つようになったっていうのが最初のきっかけです。

み:ドラマより、よくある話でいいな(笑)

出:あの時あの毒舌女子に「天パーじゃん。無理無理無理」って言われてなかったら今の僕はないです(笑)。

み:それで美容学校いって就職したと。

出:でも最初の店は2年弱くらいで辞めちゃって、それから土木系の現場で働いてました。

み:え? そうだったの??

出:で、美容系に戻ろうと思って25歳で二店めに入りました。

み:なんで急に美容に戻ったの???

出:実はウチは教員一族で、父もめっちゃ厳しくて教師とか公務員やれとずっと言われてたんです。でも僕はその道を選ばずに親にお金出してもらって美容学校行って、それなのに辞めちゃって。その時には父にすごい怒られると思ってたんですよ。ところが「残念だけどお前が選んだ道だから、遠くから応援してる」っていってくれて。ただその父が、僕が25歳の時に他界したんです。そのころ僕の気持ち的にも、美容師が嫌で辞めたわけでもなかったので、もう一度美容師やりたいなという気持ちはあったんです。そんな時に父が亡くなったので……このタイミングしかない、戻るんだったら今しかない。父に親孝行をしてあげられることはできないけど、もう一度奮起して一人前になるには今しかない、ごめんねっていう気持ちも持って戻る決意をしました。

み:で、前の店に入ったわけだ

出:僕、たまに中村トメ吉さんに髪を切ってもらってたんです。もう一回美容師やりたいと思った時に、「自分が信頼している人がいるところに入った方がいいんじゃないか」と思ったので。僕は中村トメ吉という人に絶対的な信頼を置いていたので、この人と働きたいと思ったんです。それで入れてもらいました。

み:美容師がどんな仕事かわかり始めたのはいつごろ?

出:ん〜スタイリストになってからですかね……ちゃんとわかり始めたの。真の面白さとか、大切さっていうのが。アシスタントのころは、お客さんとスタイリストだけが見える視野しかなかったんです。でもスタイリストはお客様、先輩、後輩の見え方が違って、視野が広がる。

み:デビューまではどのくらいかかりました?

出:丸2年くらいです。前の店で1年、OCEANで1年修行しました。

み:そのころはどんなことを考えていました?

出:めっちゃ焦ってたんですよ、僕。美容師やめていた時期があったから。いざ久しぶりにシャンプー、パーマのアシスタント業務。でももうすぐ26歳。超焦ってました。だって最初の店の同期はもうスタイリストでお客様持ってるんですよ、出世してるやつだと副店長もいたりして。たまに同期会があったりすると売り上げの話になって、こっちはアシスタントだし。しぼみますよね。それで頑張ろうとするんだけど、それが「自分が、自分が」になっちゃってたんです。早くデビューしなきゃ、早く親父に恩返しできるようになんなきゃって。そんな時に中村にめっちゃ怒られました。「自分出し過ぎ。自分のためにやりすぎ。あくまでお客様がいて、スタイリストがやりやすくするのがアシスタントだから」って。自己中で焦ってました。

み:ふーん

出:それで、徐々に徐々に、分かるまで2年かかっちゃいました。以前の美容師経験があるのに。技術が足りないっていうのもあるんですが、心ができあがっていなかったんだなと、今は思えます。

み:心とは?

出:なんのために美容師をやっていて、誰のためにどういう理由でやっているのかを考えていなかったです。そういう大事なことをすっ飛ばして上手くなりたいとしか思ってなかったので、だから時間がかかったんだと思います。

み:そこまで経験してきてデビューした時にはどう思った?

出:やっと、っていうのと……僕、デビューした時はお客さん全然入んなくて一日一人か二人しか切っていなかったんです。変な話、今日1日できる人数と、当時1か月で切った人数はほとんど同じです。そのくらいの有様だった。だからやっとスタイリストになれたっていう思いと……そうですね、やっと山登ったと思ったら景色が綺麗じゃなかった、そんな感じです。デビューしてすぐは、これからどうなるんだろう、どうしていったらいいんだろう。一日4〜5時間も街に名刺配りに行って。それも気まずくなって。ハサミがモテる立場になったのにハサミが持てていない。本当にきつかったです。書いてもらっていいかどうかわからないんですが、数か月は絶望感でした。

み:それが変わってきたのはいつごろ?

出:きっかけがありました。来てくれたお客様の口コミで、ちょっとずつ増えてはいたんです。一日一人二人が、4人になり5人になり。そんな時にお客様に言われたことがあるんです。前は僕、黒髪だったじゃないですか。ヒゲも生やしてて。

み:ああ、覚えてる。

出:お客様に「出井さん、LDH風の髪型作ったら人気出ますよ」って言われたんですよ。でも僕は全く知らず、当時は「のぼりさかさんって誰?」とか(苦笑)。でもそんなことを何回か言われるようになり、自分でも調べたりして、確かにこのグループかっこいいなって思って。自分もこういう系で絞っていってもアリなのかなと思ったんです。LDHだけじゃなくて、ざっくりいうとワイルドみたいな。OCEANの中でもそういう人がいなくて、じゃあってことでワイルドとか、イカツイとかで攻めてみたんです。そうしたら、その系統が好きなお客様が集まってきてくれて、そこから変わりましたね。だから何かを練習したというよりも、お客様の意見をちょっとずつ取り入れていったらこうなりました。そのお客様たちがいなかったらこうなってなかったです。

み:へー。そういう演出的な変化はあるけど、マインド的にはどういう美容師になろうと?

出:今の話も繋がってくるんですけど、僕は美容歴はまだ浅かったりとか、転職も繰り返したりしていますし、中学生の頃は天パーで自分に自信がなかったりしていました。そんなコンプレックスがあって美容師になって、今は自信がつきましたが、自信がついたというより、カッコをつける大事さとか、カッコいいを追い求める大事さに気がついたんですよ。それを発信しようと思います。僕は今でもカッコよくなりたいとか思っていますし、そう思っている男の子ってたぶんいっぱいいるんですよ。だからそういう子に、俺でもなれるんだから、キミ達もなれるよって、それを後押しするような美容師になりたいとずーっと思っています。

み:じゃあスタイリストになって嬉しかったことは?

出:ベタになっちゃうかもですが、初めて切りに来てくれた子に、「好きな子いるんですけど、髪型カッコよくしてください」って言われて、自分で毒舌女子を思い出しながら切って(笑)。次に来た時に「OKもらいました」っていってくれて。そういうのが一番嬉しいです。ってなると、その子の人生の一部として、たった1時間かもしれないけど、人生のターニングポイントに関われた、その後の人生が明るくなることのお手伝いができたとしたら、すごく嬉しいことです。髪を切ってテンション上がりましたとかはありますけど、切ってお客様の方から何か言いたくなるような結果が出たというケースは、マジで嬉しいですね。

最近も、全然自信を持っていない子が来て「せっかく髪を切ったんだから、なんでもいいから、何か新しいこと始めてみれば」って帰したら、次に来た時に「僕ランニング始めたんです。髪型カッコよくしてもらったけど、もうちょっとスリムになったらモテるかもしれないし、新しいバイトもうかるかもしれないし、髪型カッコよくしてもらってるぶん、僕も頑張れます」っていってくれて。すげえ嬉しいなあと思いました。その人に何かプラスを与えられたというのが嬉しいです。

み:最後に、美容師として目指すところはどこですか?

出:美容師としてというか、今は全国にお店を出したいので、関西付近のエリアマネージャーみたいなことをやりたいなと思っています。サロンワークをやりつついずれマネージメントの方に回って。今は文化的にも技術的にも東京に行かないと上手くいかないって思われてる現状があるんですが、全国にイケてる美容室を作ってそこが話題になって、そこにおしゃれなカフェができたりして盛り上がって、最終的には日本が盛り上がったらいいなと思っています。僕らがそのきっかけになればいい。そこの関西エリアを担当したいなと思っています。だから美容師として目指すところというより、日本を盛り上げる一部になれればいいと思っています。ハサミを持っているのは、その通過点であればいいなと。

 

出井さんに強いコンプレックスがあったからこそ「カッコよくなれる!」ということを、責任を持って、そして親身に後押ししてくれるんです。OCEAN TOKYOが日本を盛り上げる日が楽しみです!!

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